息もできない
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2010/12/03
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日本版のあらすじだと暴力の連鎖の最下層にいる主人公と、暴力によって抑圧された女子高生の救いの物語みたいになっているが
これはそんな生易しいあらすじによって想起されるような映画ではない。この映画の原題は「糞蠅」という身も蓋もない一言らしいが、
まさにその原題通り、どうしようもないほど愚劣な暴力に依ってのみ生きるチンピラの醜い生きざまがこれでもかと描写されている。
自らを暴力に縛り付けた父親の姿と、愛情をよせる周囲の人間によって、糞溜の中から抜け出そうとした矢先に、彼自身が生んだ暴力の
連鎖の鎖に縛りつけられるチンピラ、そしてまた社会に産み落とされていく一匹の糞蠅の後ろ姿。主人公の目線を通じて描かれる世界の
救いようのなさは、どうしようもないほど自由にならない根源的な人の感情、愛と恨みを苛烈に切り取っている。
「オールド・ボーイ」や「母なる証明」や本作など、韓国映画のダークサイドな傑作を観るたびに思うのが、
何故邦画でこのレベルのものが作りえないのかという疑問だ。もちろん様々な理由はあるのだろうけれど、
聞けばこの映画の監督はほぼ独力で撮りきったというではないか。日本でもそれぐらいの気概を持った
映画人が生まれてくることを切に願う。