エヴァンゲリオン新劇場版:Q観てきた


 これほど観客を舐め腐った映画ってそうそうない。


 以下ネタバレ?あり。
 
 
 



 まさか95分をまるまる引き&タメで終わらせるとは思わなかった。「序」ですらある程度の見せ場を用意してたの、今回の話は全編中弛みの引きのばしのみで95分間まるで見せ場なし。この映画単品でいったら金を払う価値は間違いなくゼロである。というか金を貰ってもみたくない一品。
 確かに四部作で考えた場合一番のダウナーな部分だろうし、たいして盛り上がらせないで次回に続くで引いて終わりだろうなとは予想していたが、まさかまったく盛り上がりなしで終わらせるとは……。制作陣はというか庵野は相変わらず全てを舐めてるとしかいいようがない。
 内容を一言で言うならば1クールテレビアニメなどではよくある捨て回と盛り上げの為のヒキの回そのものである。率直に言うと観るべき見せ場がない。そしてとにかく全編通じて冗長であり退屈。もはや製作者に観客を楽しませようとする意志が感じられないレベル。
 とにかく観客全てがエヴァの世界を知っている、というか愛しているという前提のもとに作られていのが致命的。もし仮にこの作品からエヴァにはいったという酔狂極まりない人間がいたら、この作品だけでエヴァ全てを否定してしまうことは間違いない。それだけではなくエヴァを知っているという程度の人間すら鑑賞対象として想定していない、あくまでエヴァを愛している人間にむけてのみ描かれている。もう完全に閉じた世界で内なる人間に宛てたファンムービーである。これだけ大きい市場を流通する娯楽作品としては完全に失格と言っていいだろう。

 なんていうか制作陣にエヴァファンに対する甘えがあるとしか思えない。「お前らエヴァなら何でもいいんでしょ?」と言われているような気分ですらある。

 ただ残念がら私自身はエヴァの世界に魅せられ、正負両のベクトルであれ愛してしまっている人間である。まぁ正直エヴァなら何でもいいのかもしれない。この駄作を持って何かをエヴァの何がしかを否定することはできない。というか映画として考えるから駄目なのであって、エヴァ新劇の中の一場面と考えれば、これはこれでありなのではないかとすら思う。もちろんいつになるかわからない「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」を一日千秋の思いで待ち続けるのだろうし、公開されたら例えいくつになってようがホイホイ劇場に足を運ぶであろう。

 ただねそんな思いを商売に利用されたことは非常に腹が立つんですよ!この作品は新劇の補完的な位置づけでOVAで出しとけばよかった。それならいくら高い金払ってようが、エヴァファンに向けたコアアイテムってことで納得もいく。劇場で儲けたいならもっとまともな映画を作れといいたい。

 まぁこんなふうにグチグチ批判する時点で制作側の思惑にまんまとのせられてしまってることの証なんだろうね。あぁ口惜しい…

 しかし庵野はこれだけ完結編に向けたハードルを高くしてしまって本当に大丈夫なのだろうか。この未完成品を流したことで完結編に求められる作品のレベルが数倍跳ね上がってしまった。別にエヴァになぞ解きを求めたりしないが、せめて新キャラの存在意義ぐらいは語ってほしいし、広げ切った世界観や物語全体にヲチをつけられるカタルシスは当然必要になってくるだろう。まさかまた途中でぶん投げて自己啓発ラストとかやんねぇだろうな…

 でそんな心配を抱えたまま今度は一体何年待てばいいのでしょうね?


 

 

 

 Q…

 帰宅後とるのもとりあえず録画してた冒頭6分38秒を繰り返し見る。
もう今すぐ見たいという欲求が腹の奥底からよじ登ってくる。
 なんちゅうなんちゅう罪作りなことをしてくれたんや日テレはん…
 真っ暗な部屋の中で一人興奮度マックスになりながら、とりあえずブルーレイで破を鑑賞中。今のとこ最速で見に行けて月曜日…。
 仕事から逃げ出して見に行ってしまおうか…
 

  モンスターズ 地球外生命体

モンスターズ / 地球外生命体 [Blu-ray]

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 去年流行った超低予算SF映画の流れのなかのイギリス映画。TSUTAYAの紹介文には製作費130万円で撮られたと明記してあり、公式サイトにも

昨年の第63回カンヌ国際映画祭。世界各国から話題作が多数集められるこの華やかな映画の祭典で、彗星のごとく現れ突如として世界の注目作品へと変貌した一本の映画があった。それが、製作費がたった130万円(1万5千ドル)といわれる超低予算映画、「モンスターズ 地球外生命体」だった。

 とはっきりあくまで製作費130万円と謳ってるが、最初に言っておくとこれ完全にインチキである。
 まぁちょっとでも映画見てる人なら製作費130万円で市場に流通する映画を撮るなんてことは不可能だってことはわかるだろう。実際そこらの大学サークルの自主製作映画でも場合によってはつぎ込むこともあるんじゃないかってぐらいの額だし。それこそ人件費ゼロ、場所代ゼロ、その他オールコストゼロで撮れる人間、例えば某国の独裁者でもなけりゃまともな映画作りなんて無理な話である。
 ちなみにwikiを見ると1万5千ドル=130万円はあくまで「設備機材費」であり、製作費自体は50万ドルかかっている。要するに130万円分の機材しか撮るのに使ってませんよってことだけなのだ。しかも視覚効果アーティストの監督が自宅のスタジオを使って完成させたらしいので、実際はもっとハイスペックな機材もいくらか使っているのだろう。(いやそれでもこのレベルの映画を完成させたというのは考えられないぐらい凄いことなのだけど。)
 正直誇大広告で訴えられてもおかしくない嘘を堂々と煽り文句にする配給会社の姿勢に疑問を抱かざるを得ない。大体製作費50万ドルというのも十二分に超超超低予算と言っていい額だ。低予算を売りにしてた「第9地区」だって、3000万ドル製作費にかけているのだ。ハリウッドの映画関係者に50万ドルでモンスター映画作りましたなんて言っても誰も信じないだろう。邦画だって日本円にして4、5千万で全国展開する映画なんか作れないだろうし、せいぜい単館系の映画を撮るのが精いっぱいなはずだ。たかたが50万ドルで世界中でパッケージ化されて流通する映画を作った製作者の偉業が、この低予算で作り上げた裏にある様々な苦労や工夫が、配給会社のついたありえない嘘のせいで汚されてしまっているような気がする。配給会社のこの映画の担当者には猛省を促したい。
 
 さて肝心の映画の内容についてだが、率直にエイリアン映画としての感想を言えば、やっぱりお金はないよりあるほうがいいよね!と言ったところか。そこそこ見れる映画には仕上がっているが、ストーリー、エイリアンの造型的にスピルバーグ宇宙戦争とかぶるので、どうしても金をかけた完成品が比較対象に上がってきてしまうのがつらいところ。
 主題にもなっているモンスターの登場シーンについては褒めるにしても、低予算にしてはという枕詞をつけて褒めなければいけないし、仮にこの映画が低予算映画であることを知らずに見てれば酷評するしかない出来だ。予算の関係で動いているモンスターが出てくるのは実質数回な訳だけど、どのシーンももうちょっと頑張れたのではないかという印象が強い。とくにラストのシーンは緊張感が必要なカットがあっという間に終わってしまい拍子抜けの感が拭えなかった。どうせなら登場をラストまで引っ張ってそのワンシーンのみに全力を傾ければよかったのではないかと思う。
 ただモンスター登場シーン以外の画面やストーリーは良質。つまりモンスター映画として見ずにエイリアンが襲来してパニックになったあとのパニックが日常になった「非日常の中の日常」を描いた映画として見ると実は一級品なのだ。とにかく低予算映画とは思えないほどしっかりとしている。お金がなくても諦めないという姿勢が素晴らしい。作りたい絵を画面上に生み出す金がなければ観客の脳内で補完させるというのは貧乏映画の定番ではあるが、その定番をしっかりと遵守し、金がないから出来ないという逃げをうっていない。小さいながら説得力のある看板や小道具をしっかりと配置し、恐らくハリケーンか何かで実際に壊れたであろう瓦礫の街の中で撮影をし、生活感が必要な場面では実際に生活している人間達を撮るという裏技を使いといった具合にあらゆる場面で観客に世界を想像させるための努力を怠っていない。だからこそ画面上にはしっかりとしたリアリティが存在し、描かれない裏側も観客側が想起できるような作りになっている。(ここらへんはいくら金をかけても隙だらけで、想像する意欲も沸かないようなちゃちい画のいくつかの某漫画原作邦画と比べるとよくわかる。)
 もちろん全体としては前述のようにお金をしっかりとかけて撮った一流の作品には比べるべくもないが、お金をしっかりとかけて撮ったけど二流以下の作品に比べればこの作品はアイデアと質の面で遥かに凌駕している。
 超低予算ながらそこらのハリウッドのモンスター映画に勝る世界観を作りだした製作者のアイデアと努力に惜しみない賛辞を贈りたい。イギリス映画らしいアメリカ社会に対する皮肉な寓話的スパイスも盛り込まれ、個人的には一時間半しっかり楽しめた映画だった。万人受けは絶対しないがこの手のSF映画や話が好きな人はぜひ見ておくべき一品。
 ちなみにこの監督がハリウッド版ゴジラを撮るらしい。与えられた潤沢な予算の中でどんな仕事をするのか非常に興味がわく。個人的にはローランド・エメリッヒのやつもそこそこ好きなんだけど、あれとはまた違ったベクトルの作品が出来そう。二年後公開だそうで、そろそろクランクインな感じだろうか。今から楽しみ。
 
 

  バーン・アフター・リーディング

バーン・アフター・リーディング [DVD]

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 BSでやってたのが録画に引っかかったので視聴。一言で言って無理。何かを語る価値もないほどつまらないとまで思う。コーエン兄弟のコメディはやっぱり理解しがたい。ブラックジョークもスリラーにたまに挟む程度ならいいけど、それだけで一本映画を撮るとなるとそのブラックさからくる醜悪さに耐えがたくなる。
 まぁ英語圏のコメディなんかもともと半分も理解できるわけないので笑えないのはしょうがない。とりあえずジョークの出来や映画のテーゼとかは全て置いておくとして、単純に一時間半の映画で開始一時間過ぎなきゃ物語が動き出さないっての映画としてどうかと思うよ。
 良かったところ。ブラピが過去最高レベルで狂った演技を見せつけてくれるところ。正直最初ブラピだとわからないほど筋肉馬鹿な三枚目にはまっていた。あの顔であのレベルのキャラクターを違和感なくやれるって凄い。

 ガタカ

ガタカ [Blu-ray]

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 設定というか舞台作りが完ぺき。レトロ・モダニズムな建物とか、SF黎明期の近未来的なイメージを再現した部屋の内部など用意された舞台装置が、映画の冒頭に表示される「そう遠くない未来」という一文がイメージさせる世界と完全に一致している。リアリティに走ることなく、かといって過度に幻想的でもなく、映画が映し出すべき別世界を完ぺきに構築している。
 展開されるのは優生学に基づいた管理社会でのお話。遺伝子操作によって優れた資質を生まれながらに持つものだけが社会に居場所を与えられ、持たざる者は最初から被支配層としてしか生きることを許されない。
 だがそんなガチガチの管理社会を描いているはずなのに、人間は人間として生きているのが本作の肝だと思う。社会にとって反逆者である主人公達は言うに及ばず、社会に従順に生きる体制側の人間達も人間らしさを失ってはいない。主人公に惹かれていくヒロインも、主人公を追い詰める刑事も、そしてシステムを運営し適用するはずの人々も、理性だけではなく感情で物事を判断し、そのこと自体を是として捉えている。
 結局ディストピアを構築しその中で生きていくのも人間ならば、それを破壊することができるのも人間なのだということだろうか。人が人として生きてさえいれば、どんな社会にだって適合することは可能だし、逆にその社会を変革することも可能だという本質的には人間賛歌的な映画なのだと思う。
 まぁ間違ってもリアルなSF映画という訳ではないのでそこのところは勘違いしない方がいい。倫理的な啓蒙映画とでもいうべきか、何かに感じ入りたい気分の時にオススメな映画かもしれない。

 ところで実は本作を子どもの頃に親に連れられ劇場で見ている。しかしまったくと言っていいほど記憶に残っていない。12歳程度の頭では理解しがたいものだったのだろう。っていうか当時親に連れられて劇場に見にいったものを思い返すと結構アレなチョイスばかりである。イングリッシュ・ペイシェントとかも見た記憶あるし、およそ子どもには向かないだろう作品が多い。銀座や渋谷のミニシアター系も何度か連れられて行った覚えがある。今考えると親のデートに子どもが付き合わされる感じだったのだろうか……。よく文句言わなかったもんだな俺……
 

今週のお題「好きなアニメ映画」

好きなアニメ映画……
 アニメ映画という言葉の響き的にこっち系かなと思ったので、

 これを挙げてみる。たぶん一番最初に劇場で見た映画作品。ストーリー的な部分で言ったらドラの大長編の中では海底鬼岩城なんだけど、映画としてみたら一番面白いのはここらへんだと思う。日本誕生→アニマルプラネットドラビアンナイト→雲の王国あたりの安定感は異常。
 日本誕生の牛の丸焼きは未だに映画の中に出てきた食べてみたい食い物№1である。

  モンスター上司

モンスター上司 [Blu-ray]

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 コリン・ファレルのヅラみたいな七三オールバック薬中キャラ、ジェニファー・アニストンの色情狂おばさん、この二人はハマり役、だがケヴィン・スぺイシーのネチネチ小言時々ぶち切れ殺人鬼上司はハマりすぎててちょっと恐怖を感じるレベルまで暴走していた。ユージュアル・サスペクツとかアメリカングラフィティあたりを彷彿とさせる恐怖感。
 スラップスティックコメディっぽいドタバタ感と、くだらないギャグのマシンガンラッシュはとにかく見ていて飽きさせない。ただラストあたりの整合性の取り方はもっとハジケても良かったんじゃないかと思う。ちょっと小奇麗にまとめた感があって残念。
 毎回思うがハリウッドのこの手の映画って30代の独身男性の馬鹿っぷりの描き方が異常に巧い。もはや巧の域というか、藝術的な黄金パターンが確立されているように思える。この方法論に従って日本でも馬鹿な30代男子を主人公にしたコメディを作ってみてはくれないものだろうか。