久しぶりに心の底から嫌いな小説に出会う

私の中のあなた 上 (ハヤカワ文庫NV)

私の中のあなた 上 (ハヤカワ文庫NV)

 
 このラストは許容できない。生理的な嫌悪感すら抱く結末というのも久しぶり。
こういう終わり方しか用意されてないだろうという、こちらの思い込みを見事に裏切ってくれたのはいいが、
これはあまりに救いがなさすぎる。劇中のメインテーマも何も吹っ飛んでしまうような後味の悪さ。
 内容は文句ない、最高の家族小説であり、アメリカの倫理観(あるいは世界にこれから広がる倫理観)を問い直すという意味でも素晴らしい内容にはなっている。
でも物語としては評価できない。救いを求める少女というメインテーマに、突き付けられたラストシーンはあまりに残酷すぎる。
生きることの意味と質をしつこいぐらいに説いてくるのに、答としての最後の一章がなんと薄っぺらいことよ。