何も得られないという安心感

P.S.アイラブユー (クイーンズコミックス)

P.S.アイラブユー (クイーンズコミックス)

 新刊が出るとつい無意識に手にとってしまう。
もはや大御所といってもいいほどのキャリアを誇る谷川史子。だがそのセンチメンタルさと透明感は何も変わっていない。
リア充とは180度違う精神的引きこもり生活を続けていると、彼女の作品の不変さについ癒されてしまう。
谷川史子の作品からは何も得られるものはない。魂を揺さぶる感動も、日常を忘れさせる興奮も、神経を切り裂くエグさも、
涙を流すような悲哀も、およそエンターテイメント性の欠片も用意されてはいない。
そこにあるのは少女が抱くような甘い甘い幻想的な恋愛だったり、あるいはそれすらもないセンチメンタルな日常の一コマでしかない。
そのあからさまに過剰なまでのセンチメンタリズムは、何かを新たに得ようとするのではなく、何かがすでにそこにあるということを確認させてくれる。
ふとぽっかりと空いた空白の時間に彼女の作品の柔らかい笑顔や、透明感のある涙を見て、まだ見つけられない幸福が現実のどこかにはあるのではないかという思いを
確認し、歩き出す力をほんの少し与えてくれる。
 今まで読んだ彼女の作品で思い出せるタイトルはほとんどないけれど、いまだに彼女の作品を買い続けているのはつまりそういう理由なんだろうな。

流れ星が消えないうちに (新潮文庫)

流れ星が消えないうちに (新潮文庫)

「忘れない、忘れられない。あの笑顔を。一緒に過ごした時間の輝きを。そして流れ星にかけた願いを―。高校で出会った、加地君と巧君と奈緒子。けれど突然の事故が、恋人同士だった奈緒子と加地君を、永遠に引き離した。加地君の思い出を抱きしめて離さない奈緒子に、巧君はそっと手を差し伸べるが…。悲しみの果てで向かい合う心と心。せつなさあふれる、恋愛小説の新しい名作。」
 つまりこういうレビューに惹かれたり、上のような文章を書いてしまうところに自分の精神状態の危険度が推し量れるのだね。
あ、作品に関する評価は何もなし。とりあえずどの人間にも共感できませんでしたし、書かれていることにも共感度はゼロでした。
恋愛小説っていうか青春小説っていうか…(オナニー小説っていうか…)